今どき人気のお雛様は?
2020年08月25日
雛人形のトレンドは、小さい・かわいい・オシャレ
かつては主流だった七段飾りのお雛さまも、最近は見ることが少なくなりました。核家族化が進み、若い子育て世代が住む家は市街地のマンションやアパートが多く、実際問題として大きなお雛さまを置くスペースがないというのが大きな理由です。和室のない住まいも多く、洋風の部屋をセンスのよいインテリアでオシャレにまとめたいと考えているので、昔ながらの大きな雛人形はマッチしづらいのかもしれません。
こうした背景から、近年は小さくてコンパクトなお雛さまに人気が集まっています。売れ筋は、リビングのチェストの上に置けるくらいのサイズ感。とくに居住空間が限られている都市部では、スタンダードになりつつあります。お雛さまのお顔も、古風なすまし顔は「怖い」と感じる人が多いことから、やわらかな表情のかわいいお雛さまが好まれています。とくに、赤ちゃんや幼子のような丸くて愛くるしいお顔が人気で、「わが子に似ているから」という理由で購入を決める人もいます。また、若い世代のセンスにあわせて、モダンな配色の衣裳を着せ付けたオシャレな雛人形が増えました。洋風のリビングに置かれることを意識して、調度や雛道具もインテリアに溶け込む軽やかな色・柄のものが登場。ピンクや白を基調にしたお雛さまも人気で、無垢の木肌を生かした素朴なデザインも、ナチュラル志向の人たちに支持されています。カラフルで個性的な雛人形は、フォトジェニックなお雛さまとしてもSNS世代の感性やニーズにあうのでしょう。
孫の初節句でこのような状況を目の当たりにした親世代は、大きなもの、伝統にのっとったもの、高級なものが良しとされていた自分たちの時代とのギャップに、たいへん驚かれることでしょう。小さくてアレンジの効いた雛人形は、略式で伝統を軽んじるものと思われるかもしれません。大きさが愛情のあらわれと考えている人もいるでしょう。しかし、長い雛人形の歴史を紐解くと、お雛さまはもともと内裏雛のみの親王飾でしたし、人形のサイズも大きくなったり小さくなったり、時代を反映しその時々の流行を汲んで様変わりしてきたのです。何百年も経て私たちの暮らしはこんなに大きく変わったのですから、お雛さまのカタチが変化しても特別なことではありません。大きくて豪華な七段飾りはある時代の流行にすぎず、もしかしたらいまのトレンドが何十年か先の当たり前になっている可能性だってあるのです。
大切なのはお雛さまに込める家族の思い。生まれてきた赤ちゃんの健やかな成長としあわせを第一に考えて、家族みんなで相談して決めていただきたいと思います。
コンパクトでも「本物志向」の雛人形が人気急上昇中
小さいお雛さまだからといって、簡素で安価というわけではありません。むしろ、いま人気があるのは、コンパクトでも細部まで作り込まれた本物志向の雛人形です。
手のひらに収まるほどの小さなお雛さまはつくりが小さいため、製作にはより高度な技術が必要です。人形の命ともいわれる頭づくりも、親指の先ほどの頭に顔を描き髪を結う作業はとても繊細で、わずかな誤差も仕上がりに影響します。人形が小さくなるほど、衣裳の仕立てや着せ付けにも手間がかかります。小さな人形と一緒に並べる雛道具も同様に、精巧に作り込むには熟練した技が不可欠です。
小さくてもきちんとしたお雛さまを用意してあげたいと考えている方には、職人の手でしっかりと作り込まれた本格的な木目込雛人形をおすすめします。衣裳着人形は何枚も衣裳を着せ付けるため、小さくするには限界がありますが、木目込人形はその製法から小さく作ることに適しており、丸みを帯びた愛らしいフォルムもあいまって、近年人気を集めているお雛さまです。衣裳の裂地(きれじ)に30㎝で数万円にもなる金襴織物を使う高級品もあり、質の高さでは衣裳着人形に劣りません。
ライフスタイルにあったオシャレな雛人形を探している若い世代と、間違いのないしっかりとしたお雛さまを選んでほしい親世代、どちらの気持ちも尊重した雛人形として、皆さんも「コンパクトで本物志向」の木目込雛人形を選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。
機能性重視の「ケース飾り」や「収納飾り」も根強い人気
家族が集うリビングにお雛さまが飾られるようになって、ホコリが気になる方も多いでしょう。雛人形は繊細で湿気とホコリが苦手ですので、飾っている間もホコリが付いたら毛ばたきで払う必要があります。
そうした煩わしさををなくし、いつもきれいな状態でお雛さまが飾れる「ケース飾り」は根強い人気があります。確かに、ガラスやアクリルでできた「ケース飾り」はホコリから守りながら雛人形が飾れるスグレモノ。小さい子どもたちが汚れた手でさわるのも防げて、一石二鳥です。また、「ケース飾り」は人形やお道具を固定したもの、屏風や雪洞など一部を固定したもの、すべて固定していないものに分けられ、固定したものはそのまま出し入れすればよいので飾り付けや片付けの手間がかからず、収納がコンパクトになるというメリットもあります。
固定式の「ケース飾り」の多くは、屏風を省略し背景に和風の柄模様が描かれているものが大多数ですが、一部固定式や固定していないものには現代的なデザインが多く、背面も透明になっているものや、継ぎ目の枠をなくしたシームレスのものもあります。人形工房ひととえでは、格調高いお雛さまを宝石のように大切に飾っていただくために、宝飾店のショーケースのような重厚感・高級感・透明感にこだわったオリジナルガラスケースをご用意しています。
一方、飾り付けの面倒を減らし、収納時の省スペースもかなえたい方には、「収納飾り」も人気です。「収納飾り」は、お雛さまを収納していた箱がそのまま飾り台としても使えるもので、主に蓋付きのボックスタイプと引き出しタイプがあります。どちらも雛人形を取り出しやすく、収納場所もコンパクトに収まるとあって、ニーズの高いお雛さまです。
人形を一つひとつ飾ったり、ホコリを払ってあげたりと、お雛さまに手を掛ける時間は、愛着を深める時間でもあります。しかし、面倒なあまりに飾らなくなってしまったら意味がありません。長く大切に飾っていただくためには、機能性を重視したお雛さまを選ぶのも賢い選択かもしれませんね。
「壁掛けタイプ」なら設置スペースがなくてもOK
雛人形を置く場所にお困りの方には、よりコンパクトな「壁掛けタイプ」もおすすめです。掛ける壁面さえあれば、置き場所がなくても飾れるメリットがあり、お雛さまを飾ることで部屋が狭くなることもありません。手軽なタペストリー風のものから、しっかりとした吊り棚式のものまで、大きさや素材は多種多様で、リビングはもちろん、玄関や子ども部屋にも飾りやすいお雛さまです。
人形工房ひととえには、置く・掛けるがどちらも可能なハイブリッドタイプの飾り台があります。壁掛けとして飾ることを想定して、奥行を浅く、形も十二角形にしてインテリア性を高めています。お人形は工房で一番小さいサイズを使い、男雛女雛と三人官女の五人飾をかわいい雛道具と一緒に飾ることができる人気の高いお雛さまです。
雛人形の人気は、ニーズの裏付けでもあります。若い子育て世代の「こんなのあったらいいな」に応えられるよう、「雛人形はこうあるべき」という既成概念にとらわれることなく、新しい時代にふさわしいお雛さまをお届けしていきたいと考えています。