今どきの雛まつり、みんなはどんなふうにお祝いしているの?
2020年09月24日
〇 “フォトジェニック” な今どき雛まつりで思い出を残す
初節句を迎えるご家族に限らず、小さな女の子がいるご家庭にとって、雛まつりは欠かせないイベント。雛人形を飾ったり、ちらし寿司を作ったり、定番のお祝い準備をされている方も多いと思います。そんななか、近頃では「ホームパーティーをした」「雛まつり用の衣裳を買った」「写真館に行った」など、気になる話題も聞こえくるようになりました。「今どき、みんなはいったいどんな雛まつりをしているの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
節句文化の啓蒙・振興をおこなっている日本人形協会が2017年に発表した「雛まつりに関する実態調査」(0~5歳までの女児をもつ20~30代の母親500人を対象、2016年12月にインターネット調査)では、今どきママたちの新しい雛まつりの楽しみ方を浮き彫りにしています。
この調査でわかったのは、若いママたちの半数近く(44%)が「子どもに着物やドレスを用意したい」と考え、5人に1人が雛まつりの写真をFacebookやInstagramのいずれかで投稿した経験があるということ。そのうちの8割以上が娘の写真を投稿しているのだそうです。SNSを自在に使いこなす若い世代にとって、かわいい娘の晴れ姿を “インスタ映え” する写真におさめること、それをSNSに投稿してみんなに見てもらい喜びを共有することが、大きな関心事となっているようです。キーワードは「“フォトジェニック” な雛まつり」。ビジュアル的にいかに楽しく充実した家族イベントとして思い出に残すかが、今どきの雛まつりには不可欠なんですね。
一方で、今どきの若いママたちも日本の伝統的な慣習に興味があることがわかります。「雛まつりで重視したいこと」を問う質問では、「家族で過ごすこと」65.4%に続き、「雛まつり料理」32.0%、「雛まつりの伝統」26.4%となっており、自由回答では「日本の伝統を大切にしてほしい」「子供にも将来受け継いでほしい」「これからも伝えていってほしい日本の伝統行事」などの意見が多く寄せられています。「雛まつりにどんなことをして過ごそうと考えているか」の問いには、「雛人形を飾る」67.4%、「雛まつりにちなんだ食事をする」54.2%、「雛まつりにちなんだお菓子を購入する」50.6%となっており、伝統的な雛まつりをしっかりと受け継いでいることがわかります。
今どきママたちは、新しいツールを使った新しい楽しみ方で現代の雛まつりを祝う一方で、親から子へと伝わる伝統文化を大切に守っていきたいという気持ちも垣間見られる結果でした。
〇“インスタ映え” する衣裳&飾り付けで盛り上げましょう
では、今どきママたちはどんな工夫を凝らして、“フォトジェニック” な雛まつりを楽しんでいるのでしょうか。具体的な事例をあげてご紹介していきましょう。
まず、最大の関心事は「主役となる女の子をいかにかわいく見せるか」ということに尽きるでしょう。おじいちゃんやおばあちゃんもお祝いに駆け付ける初節句には、昔からよそ行きのベビー服を着させたりしたものですが、今どきママたちにはもっと強いこだわりがあります。「和の伝統文化なのだから、ベビーファッションも和風にまとめたい」というわけで、最近では袴風の色鮮やかなロンパースがたくさん出ています。着心地のよい生地を使った上下つなぎのロンパースに着物と袴が柄として描かれ、袖にも小さな袂がついていて、なかなか手が込んでいます。初節句だけでなく、お食い初めや誕生日にも活用できそうですね。足袋に草履をはいたような柄付きソックスとあわせれば、完璧な和風スタイルが出来上がり。少し大きくなったらお子さんには、和洋折衷の着物風ドレスもあります。和装レンタルのお店では、十二単風のベビーきものをご用意しているところもありますので、まるでお雛さまのような装いで雛まつりを楽しむこともできます。
ここまでファッションにこだわったら、記念に写真館に出向いて家族写真を撮ってもよいですね。現に雛まつりに写真館に行く方は思いのほか多いようです。子どもの成長を撮影するのに写真館を利用するのは、「七五三」「お宮参り」「百日祝い(お食い初め)」「お誕生日」に続き、「入園・入学」と同じくらい「桃の節句・端午の節句」に活用するご家庭があるそうです。家族にとって喜ばしい晴れの日をプロのカメラマンに撮影してもらえば、長く思い出に残る写真になることでしょう。子どもの成長記録として、きちんとした家族写真を残したいと考える方も多いようです。親子三世代で撮影すれば、おじいちゃんやおばあちゃんもきっとお喜びになりますね。写真館での撮影そのものを思い出に残るイベントと考えているご両親も多いようです。もはやご家庭ではなかなか飾れなくなった大きな段飾りの雛人形と一緒に撮影できたり、お姫さまのようなドレスを着てモデル気取りで撮ってもらったり、という経験そのものが貴重な思い出になっていくのかもしれません。
もちろん、おうちでも雛人形と一緒に写真を撮りましょう。ひととえの工房にも、購入いただいた方からお嬢さまと雛人形を一緒に撮った写真がたくさん寄せられます。ご家族の嬉しそうなお顔とともに、華やかに飾っていただいている様子を、いつもたいへん有難く拝見しています。
お雛さまはそれだけで飾ってもとても華やかでかわいいのですが、今どきママたちはさまざまなグッズを使って楽しく飾り付けています。たとえば、春らしい色のバルーンで雛人形の周りを埋め尽くしたり、ペーパーファンやガーランドなど、パーティーデコレーションに使うグッズで雛人形の背面を飾り付けたり、まさに “フォトジェニック” な雛まつりディスプレイを楽しんでいらっしゃいます。こうしたグッズはプチプライスで購入できることもあり、上手に活用される今どきママも多いようです。
〇春らしい彩りの伝統的な行事食にも注目して
今どきママたちにとって、雛まつりのお料理も “フォトジェニック” であることは不可欠です。ちらし寿司や雛あられなど、雛まつりの行事食と言われる食べ物は、もともと春らしい彩りで目を楽しませてくれるものばかり。ぜひ、お祝い料理に取り入れてみてください。
そもそも、縁起の良い食材を使うちらし寿司は、お祝いごとの料理として親しまれてきました。たとえば、エビには「腰が曲がるまで長生きできますように」、レンコンには「ずっと先まで見通しがききますように」、マメには「健康でまめに働けますように」、タケノコには「すくすく育ちますように」といった無病息災の願いが込められています。定番の具材に限らず、日本各地にはその地域の旬の食材をのせた郷土食としてのちらし寿司があります。奈良・平安の貴族たちも、季節の食材は生命力にあふれていると考えていて、桃の節句には滋養によい旬のものを食べたといいます。
色とりどりのちらし寿司は、子どもたちにとってもワクワクする料理。桃の花型の具材をアクセントにしてもかわいくキマります。てまり寿司風に丸いお寿司を彩りよく並べても豪華。小さなお子さんがいるご家庭では、かわいいカップに小分けしたカップちらし寿司も便利です。
雛まつりの定番である潮汁には、春に旬を迎えるハマグリが入ります。二枚貝であるハマグリは、対になる貝殻としかぴったりと合わないため、日本では昔から良縁や夫婦円満の象徴とされてきました。香りのよいハマグリのすまし汁に春らしい菜の花のおひたしを添え、紅白のはんぺんなどを浮かべれば、食卓もいっそうにぎわいます。
食事に添える白酒も、古くは桃の花を酒に浸した桃花酒が飲まれていたようです。中国で桃は魔除けの植物であり、桃花酒は「百歳(ももとせ)」まで健康でいられる不老長寿の薬酒と考えられていました。しかし江戸時代になると、みりんや焼酎に蒸したもち米や米麹を仕込んで作る白酒に変化していきました。ただし、白酒にはアルコールが入っていますので、子どもたちに飲ませるにはノンアルコールで飲みやすい甘酒を用意してあげましょう。
カラフルなパステルカラーがかわいらしい菱餅や雛あられも行事食に数え上げられます。
菱餅のルーツは、古代中国の母子草(ははこぐさ:ゴギョウのこと)が入ったお餅で、日本に伝わってからはよもぎ餅に取って代わられました。江戸時代になると、菱の実を入れた白い餅と緑のよもぎ餅を重ねた菱形のお餅に変化。明治に入ると、山梔子(さんしし:クチナシの実のこと)を入れた赤いお餅が入って3色になりました。いかにも雛まつりらしい3色には、緑は厄除け、白は子孫繁栄・長寿、赤は魔除けの意味合いがあり、効能もよもぎには増血作用、菱の実には血圧低下、山梔子には解毒作用があるのだとか。また、白は雪、緑は新芽、赤は桃の花をイメージしており、「雪の中から新芽が芽吹き桃の花が咲く」春の情景を映しているのだそうです。
雛あられの起源には諸説ありますが、江戸時代に盛んに行われた「雛の国見せ」という風習が関係していると考えられています。「雛の国見せ」とは、室内に飾られた雛人形を野外に持ち出し春の景色を見せてあげるというもので、菱餅を砕きあられにして持っていったのが始まりといわれています。ピンク・白・グリーンの3色には菱餅と同様に、雪の大地・木々の芽吹き・生命力を表していると考えられています。黄色も加わった4色の雛あられは春夏秋冬(赤・緑・黄・白)を表しており、自然のエネルギーを得るという意味合いが込められているのだそうです。
食後のデザートに添えたり、お茶のお供にするなどして、お子さんと雛まつりのお菓子についても話ができるとよいですね。
盛り付けには、今どきの便利グッズをふんだんに投入してください。雛まつりカラーのペーパーナプキンを置くだけでも食卓が華やぎますし、桃の花をイメージした食器や箸置きは、雛まつりのほかに入園・入学の祝膳にも活用できそうです。一人ずつ彩りのよい食材を串にさす「ピンチョス」も今どきのホームパーティーには欠かせない “フォトジェニック” な料理。お弁当用のかわいい串で、うずらの卵やプチトマトを生ハムやチーズと一緒にさすだけで、お子さんも食べやすく見栄えもよい一品が出来上がります。いろんなアイディアで、楽しい雛まつりの食卓を演出してくださいね。